くらべることはない
2010年7月3日
会うたびに少し痩せた姿のマイケル。彼はあいかわらず忙しくビジネスをしている。
はじめて会ったとき、彼はわたしが帰り道によく寄っていた下宿に住む大学生だった。建築学を専攻するかたわら、近隣都市で養鶏場を経営。両親からの仕送りは受けていない。身のまわりにあるものからスタートし、それを増やしていく。夢は大きく持つ。ビジネスのこつを教えてくれた。
あれから5年、マイケルは修士課程に進学した。ビジネスも忙しく、大学院のあるイフェと近隣都市を走りまわっている。わたしに会う時間も、ほとんどない。
2年前のある日、ワイシャツにネクタイを身につけたマイケルに言った。
「仕事うまくいっとうみたいやん。うちら同い年なのに、わたしはまだ学生。いまだにここであのころと同じ勉強をしとう」
「見て、長さ全部ちがうでしょ? 神さまはぼくたちにそれぞれ違う長さの指をくれたんだ。どの指だって大事、くらべることはない」
わたしに向けられたあの大きな右の手のひらを、思い出す。
(毎週土曜日更新)