ソーシャルメディア時代のコミュニケーション(後編)
2010年10月20日
今回は、前回に引き続き、ソーシャルメディア時代のコミュニケーションについて、メリットと筆者なりの今後についての予想を述べてみたいと思います。
メリット
前回紹介した筆者のコミュニケーション方法は、もちろん、すべての状況にあてはまる訳ではありません。プライバシーや内部情報の保護を考慮する必要がある場合もあります。しかし、筆者周辺では、上記のようなコミュニケーション方法が多くの場合をしめるようになってきました。
ここにはよい副作用もあります。最近経験した事例をひとつ紹介します。筆者がTwitter上で友人と会う約束をしていた際に、偶然共通の友人がそれを知り、飛び入りでひとりが加わり3人で打ち合わせをすることになりました。そこで、予想していなかった情報交換ができて、新しいコラボレーションの可能性を開拓することができました。
メールでデータ量の大きな情報を送らないぶん、相手のメールサーバや出先でiPhoneなどのスマートフォンで受信する相手に対して負荷をかけることも少なくなりました。SlideShareでスライド資料を共有し、それをTwitter上で伝えたところ、その打ち合わせには無関係の友人から有益なフィードバックを得ることができました。さらに、写真をPCに取りこんで圧縮したり、ノートのメモを文字起こしする労力も不要となりました。機密情報やプライベートな連絡先などはDM(ダイレクトメッセージ)機能を用いますが、Twitter上で連絡を取り合うことで、一度に記述する文字数が140文字に制限されることもあり、少ない文字数で効率的にコミュニケーションを取る意識が向上し、長いメールを書くこともなくなり、時間の短縮にもつながっています。
イベントやパーティなどで人と知り合った際にも同じような状況があり、名刺交換をしてそれをPCに打ちこんだり、スキャンしたりする労力の代わりに、Twitterのアカウントを共有し、必要に応じて詳細の情報をDMで共有するような機会が増えています。
ビジネスモデルの転換点
筆者にはひとつの予想があります。近い将来、電話番号や電子メールというものが、コミュニケーションの際の必須基盤ではなくなるのではないかと考えています。
このことは、コミュニケーションの基盤がソーシャルメディア上に移行しつつあるなかで、必然的に迫られる変化であり、多くの企業などに、ビジネスモデルやエコシステムの方向転換を迫るのではないかと考えられます。
電話番号の利用権を購入するためだけに高額な費用を支払わなければならないのは、そこにそれだけの設備投資などの費用が必要であった時代の産物です。
電話番号を持たなくても、ブロードバンドや広域無線LANのサービスを利用すれば、TwitterやFacebookを用いたメールに代わる「メッセージング」を行うのみならず、Skype(iPhoneやiPod Touch、PC、Macなどで利用できる無料のビデオ通話サービス)を用いた「電話」をすることもできます。
米国においては、Google社が無料の無線LAN(WiFi)サービスを拡充させています。台北ではwiflyという公共無線LANサービスが市内をほぼ網羅しており、携帯電話上で3Gの回線を用いて海外通話用の高い通話料を支払わなくても、Skypeで十分な「電話」ができます。日本においては、このような通信環境はそれほど普及していませんが、直近の未来では、携帯電話サービス会社との契約も必要とせずに、iPod Touchのようなスマートモバイル情報端末が、現在の携帯電話に代わる時代がくるのではないかと思います。
Virtual Real Media
そのころまでには、筆者の周辺で現在起きている変化、つまり、電話番号や電子メールアドレスが不要な状況が現実になるのではないかと考えています。そこでは、ソーシャルメディアは現実世界を補完するヴァーチャルリアルメディア(事実上のリアルメディア)として機能し、現実世界と同様に最低限のルールをお互いに守りながら、オープンなコミュニケーションが活発に行われるようになります。そして、通信インフラの上で、電話番号やドメインの利用に高額な費用を支払うことなく、ソーシャルメディア上でこれまでになかったよりリッチで効果的なコミュニケーションを行うための新しいテクノロジーを選択して対価を支払う時代がくると確信しています。