サッカーが好き
2010年12月4日
「すんませーん」
学ランを着た中学生たちは、そう言って道を開けてくれた。ざっと数えて6、7人。ふたたび道をふさいでサッカーをはじめた彼らをよそに、急いでいたわたしはまた自転車をこぎはじめた。ひさしぶりの故郷のかおり。博多湾へつづく道すがら、なま暖かい12月の風を胸に受けて思い出す……そういえば、こんなことまえにもあった。
「ア・ベッグ、ノー・ヴェックス(すんませーん、ごめんなさい)」
裸足の少年たちは、そう言って道を開けてくれた。錆びついたガードレールのゴールを端に寄せてくれた少年は、後部座席のわたしを覗きこんだ。凸凹で亀裂の入ったアスファルトが、彼らのサッカー場。日曜の午後ともなれば、ラゴスのゲットー、アジェグンレの通りはどこもかしこもサッカー少年たちで溢れる。ギニア湾へつづく道すがら、視線と砂ぼこりを頬に受け、レバーを巻きあげて窓を半分だけ閉める。これからはじまる9jaでの暮らしに、不安と昂揚から緊張していた。
「サッカーは世界共通言語」と書かれた巨大な看板、サッカー観戦用テレビの置かれた路上のテント、サッカー番組の舞台セットにイフェのアーティストが彫ったサッカーボール、みんなで汗をかきながら庭でしたサッカー……海辺への道すがら、いくつものシーンが浮かんでは消える。
(毎週土曜日更新)