師匠を訪ねて
2011年1月29日
18歳のとき弟子入りして木彫を学びはじめたオバダレさんは、その後、大学でも木彫を専攻した。大学付属の自然史博物館の館長に依頼されて木彫作品をつくったことから、手先の器用さが認められ、その博物館で剥製師として雇われることになった。
オバダレさんが師匠の工房へ連れて行ってくれた。工房に入るとすぐ、オバダレさんは師匠の足もとでひれ伏した。五体投地するように両手・両膝を地面につけ、全身を伸ばして伏す。ヨルバの男性独特の挨拶方法で、目上の人への最大限の敬意の表し方だ。体を起こし、手のひらとズボンについた木くずを払うと、オバダレさんは言葉での挨拶をつづけた。
帰りのバスのなかでオバダレさんは言った。師匠は自分を本当に手厚く育ててくれたのだと。15人の弟子のなかで木彫を専門職としないのはオバダレさんだけだが、今でもときおり、こうして師匠を訪ねる。師匠がいるということ。弟子であるということ。師弟関係は目に見えない、クモの巣でつながっている。
(毎週土曜日更新)