弟子はいない
2011年2月5日
パパケイはいつも「ひとり」で仕事をしている。大作に取りくむときも、こまごまとした作品をつくるときも。どうしても手が足りないときは長男や次男に手伝わせる。ふたりの息子はそれぞれ、物理学者と医者を目指している。
住宅地の貸家の一室と居間をアトリエにして家族とほそぼそ暮らすパパケイ。彼を「アーティスト」だと知っている人は、この街にどのくらいいるのだろうか。すくなくとも近所の人たちのあいだでは、「いろいろなものを手でつくっている、クンレ(長男)くんのお父さん」という認識でしかない。
弟子入りしようとやってくるものもいない。若ものたちがパパケイから学ぶべきことはたくさんあるはずなのに。弟子たちがいれば、パパケイはもっとたくさんの仕事をこなせるだろうに。いや、でも、仕事は不定期にしかこない。弟子にあたえる十分な画材やわずかな小遣いもないのに、彼らを受け入れられるだろうか。
自作のセメント彫刻を壁にたてかけながら、パパケイは言った。
「これからもっと歳をとったら、こんなセメントの塊、ひとりじゃ抱えられないな……」
苦笑いと一緒に不安とあきらめが交錯するため息を吐き出した。
(毎週土曜日更新)