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タイヤよ、歩きつづけ

2011年3月26日

2010年7月2日 イフェ、イレモ地区のアフォラヨンの工房にて

街でふと、バイク修理工の足もとに目をやった。黒のゴム地にシンプルなデザインで、鼻緒のむすび目の赤がアクセントのサンダル。少々ごつそうにも見えるけれど、その格好のよさにわたしもひとつ欲しくなる。友人に話すと、「ああ、アデジャのこと? あんなものが欲しいの?」と笑いながら、店へ連れて行ってくれた。

店の入り口には、古タイヤを開いて延ばしてペロンとした長いゴムが縦に横にすだれのように垂れさがっていた。アデジャは使えなくなったタイヤからつくられる。何十万キロもの道を走りぬけてここへたどり着いたのだろう。幾度の衝突・脱輪を経験してきたのか――この世に生まれて刻まれた深い凹凸のなくなったタイヤを、なでてみる。なめらかなはずの表面は砂とゴム粕に覆われて、なおざらざらしている。

友人はおしえてくれた。アデジャとは「荒れ地でも歩いていける」という意味だと。

両足でタイヤを踏みしめる。生まれて、生きぬいていくタフさに触れた。

Photo
仕事中の手を止め、遠視用眼鏡をかけ、鼻緒ずれする買ったばかりのわたしのアデジャの鼻緒を彫刻刀で丹念に削ってくれる木彫家のアフォラヨンさん。安価(1足約150円)で丈夫なアデジャは足もとの悪い場所で重宝するため、農夫や労働者が履くことが多い。
2010年7月2日 イフェ、イレモ地区のアフォラヨンの工房にて

(毎週土曜日更新)