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緑うすき熱帯

2011年4月9日

「熱帯アフリカってどんな感じですか?」
大学2年生の立春、アフリカ美術史の恩師にたずねてみた。1960年代にナイジェリアで10年暮らしたイギリス人の恩師は、しわしわの大きな白い手を羽に見たてておしえてくれた。
「ジャングルにはね、こんなに大きな蝶蝶がいるんだよ」

それから6年がたち、わたしは熱帯アフリカで木彫家たちと話していた。彼らが口をそろえて言っていたのは、「木がない」、ということ。彫刻に使うのはジャングルに育つベンガルボダイジュやチークといった堅い高木。頑丈であることから、建築や造船、家具などにも使用される。伐採に植林がついていけずに確実に減ってきた木々は、切なき吐息をもらしている。

あの日恩師の研究室に現れた大きな蝶の孫たちが故郷の木々のあいだをのびのびと羽ばたく姿を、見たい。蝶の息吹を感じたい。この地球でわたしたち人間が起こしている問題の多さにただため息をつくだけでは、いけない。

Photo
トインの弟のシェグンが、水タンクの土台までのぼり、竹棒を使ってココナッツの木になる実をとろうとしている。植物の好きなトインの母親は、自宅敷地内にココナッツ、マンゴー、カシュをはじめたくさんの木々を植えている。大都市ラゴスの庶民の住宅地ではめずらしいことだ。この木は、およそ20年まえにトインの母親が植えた。
2009年11月8日 ラゴス、アラバドのトインの実家にて

(毎週土曜日更新)