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ンゴズィの嫁入り

2011年4月30日

2011年4月25日のイースターマンデーに、ンゴズィは嫁いだ。

2008年12月の合宿、2週間おなじ部屋で過ごしたわたしたちの夜な夜な話の主題はいつも、「好きな人」の「あれやこれ」だった。
「あなたの夢見てたら、いま、あなたの電話で目が覚めたわ!」
早朝から大声で電話している彼女に起こされて、迷惑したこともあったけれど。

2010年7月、ンゴズィは彼女の職場で婚約者を紹介してくれた。婚約を翌週末にひかえていたふたりは、結婚式をおこなう教会のことでもめていた。ンゴズィの両親は、所属教会の決まりで、彼の教会での式には出席できない。「両親なしに式などあり得ない」とンゴズィ。「自分の所属教会でしか式は考えられない」という彼。お互いに折り合い点を見つけられないままに、婚約は延期となった。

その8か月後にイーメールで届いた結婚式の招待状には、ンゴズィの妥協がにじみでていた。両親を思う彼女の苦しい選択だった。それは結婚という重んずるべき通過儀礼ゆえか。ひとことでは表せない、ンゴズィの愛ゆえか。

Photo
ンゴズィ(右)と、台所で夕食の準備をしている彼女の母親。ナイジェリア東部の地方都市ンスカにある彼女の実家をはじめて訪ねた日に撮影。ナイジェリアのキリスト教徒のあいだでは、結婚相手は、キリスト教という同じ宗教を信仰しているだけではなく、同じ宗派であること、さらには同じ宗派の同じ教会に所属していることが好まれる。それぞれが所属する(通う)教会への帰属意識は非常につよく、その教会とそこの神父や牧師への忠誠心も確固たるものだ。教会は、毎週の礼拝だけではなく冠婚葬祭をおこなう場でもあり、基本的に夫婦や家族は同じ教会に所属する。異なる教会へ所属する場合は、やはりトラブルになることが多い。
2009年8月14日 ンスカ、ンゴズィの実家の台所にて

(毎週土曜日更新)