帰郷と旅立ち
2011年6月4日
関西国際空港を発って11時間のフライトを終えると、カタールの首都ドーハに着く。乗り継ぎ客用の荷物検査場を抜ければ、前後にいた日本人たちはたちまちどこかへ散っていく。両肩にくいこむ機材の入ったリュックサックの重みも忘れながら急ぎ足で着いたラゴス行きの搭乗口には、懐かしい人たちが集まっていた。
ほとんどの人たちのお腹はまるまると突出している。メタボリックは症候群ではなく富の象徴。あたりは食べかすや空き缶でちらかっている。ポイ捨ては彼らの習慣。男性も女性も、香水や金色のアクセサリーでギラギラと輝かしい。帰国ともなれば身だしなみは必要不可欠。そのあいだに、ジーパンにポロシャツ姿の中国人のグループがちらほら。青白い顔でみんなを見つめる日本人バックパッカーが、最後尾にぽつり。
カバンにも袋にも入らない大きなぬいぐるみを抱えた彼を迎えるのは、娘だろうか。ジャケットを羽織り、新品の靴をはいた彼を待つのは凱旋の歓声か、嫉妬の嵐か。北京語で話している彼や彼女が繰りひろげるのは、どんなビジネスなのだろうか。9jaの友人たちはどんな顔でわたしを待ってくれているのだろう?
あと8時間じっと座ったのちにあの湿気と熱風に触れれば、わたしたちはそれぞれの家路を、旅を、歩んでいく。
(毎週土曜日更新)