最後の敬意
2011年10月22日
9jaの葬式は明るい。生演奏が聞こえてきて、スピーカーからも大音量で声がしている。道沿いにはテントが張られ、伝統衣装で着飾った人たちがたくさん集まって何やら騒いでいると思えば葬式だった、なんてことはよくある。一見、結婚式とまったく区別がつかない。
ミュージシャンを雇って、料理をふるまい、贈り物をして、大金を使う。そう、ただ、祝うためだけに。踊っていたら、悲しみなんてどっかにいってしまう。
会場をよく見まわすと、亡くなった人の顔写真がいたるところに貼られている。式のプログラムの表紙、贈り物(日本でいう香典返しの品)としてのオリジナル手帳やカレンダー、それを入れる紙袋……はなばなしく、誇らしい「遺影」だ。
演奏に忙しくしているミュージシャンが言った。
「ここでは死を喜ぼうとするんだ。葬式は最後の敬意なんだよ。それしかできないから。死んだ人を生き返らせることはできないし、亡くなった親に食べ物をあげることもできない。だから次にやるべきは、神さまがその人に与えてくれた命に感謝して、祝うこと」
「聖者の行進」はどこからともなく聞こえ、去っていく。
(毎週土曜日更新)