難民の人類学 タイ・ビルマ国境のカレンニー難民の移動と定住
久保忠行 著
問題は、難民というラベルが突きつける固定観念である。
故郷を追われ、難民キャンプや遠く離れた国で暮らす難民たち。ビルマ(ミャンマー)、タイ、アメリカでたくましく生きる姿を丹念に追い、その姿に新しい光をあてるフィールドワーク。
「迫害される少数民族」が難民になるという図式は、書物から学んだものと一致する。そうした話に触れるたびに、まるで自分が歴史の証人になったような気になり、背筋が伸びる思いをした。
しかし、困難な経験を自ら語る「迫害される少数民族」に出会うたびに、違和感を覚えることもあった。それは、まるで迫害の経験が定型化されているのではないか、というものである。………難民に無力さがともなうことには違いはない。しかし、それを主張するという行為に、人間が生きるうえでのたくましさを感じるとともに、一般的な難民イメージでは難民を適切に理解できないのではないかと考えるようになった。
………そこで、本書では難民というラベルの意味を検討しつつ、当事者が難民であることを受容し、ときに利用しながら生きる姿を明らかにする。
――緒言「問題の所在」より
日本図書館協会選定図書(第2929回 平成26年11月19日選定)
- ISBN・分類コード
- 978-4-87950-615-3 C3039
- 価格
- 3000円(本体)+税
- 判型
- A5判 上製本
- 発行年月
- 2014年9月