ひりつく色
挾土秀平 著
日本を代表する左官職人が吐露する、思考の痕跡。
体験に裏打ちされた『生きた言葉』が描く色の物語。
土と水と言葉にあやつられたひとりの男。
「見えすぎる眼」をもつ左官が
土のかわりに怯えと狂気を塗りつける。
(編集者 中瀬ゆかり)
自分たちらしい変革と転身であるなら、
たとえ『左官』という職業でなくなってもいいと思っている。
新しい組み合わせ、新しい企画。
どんなジャンルでも、どんな人物であっても、
認め合えれば、引き出し合えたなら、新しいなにかが生まれる
日本図書館協会選定図書(第2954回 平成25年6月17日選定)
ある日のこと。
人けのない林の細い下り坂の途中だった。深山の清流を背にしたクマザサの奥を進むと、白骨化した獣の死体を脇にして、黒い顔をのぞかせていた粘土に手を伸ばした。ぐっとつかんで陽にかざしてみると、指先から乾いてくる色あいが、まるで夜空のような青味を帯びている!
人生で神様を感じる瞬間が人それぞれにあるとしたら、
この瞬間が、自分の背骨をつかんだ運命的な場面だったと思う。
日本を代表する左官・挾土秀平が「自分の背骨をつかんだ」のは、夜空のような紺色の土に出会った瞬間だった――
自然の土が生みだすさまざまな「色」をテーマに、人との出会い、仕事、表現などへの思いをつづった25編のエッセー。
- ISBN・分類コード
- 978-4-87950-616-0 C0095
- 価格
- 1500円(本体)+税
- 判型
- 四六判 並製本
- 発行年月
- 2015年5月