父を手伝う
2010年7月10日
「ぼくはやりません。木彫でやっていくのはきびしいから」
彫刻家のアヨデレさんの次男ダミロラは、大学の受験勉強をしながら携帯電話の修理店で働いている。修理の技術はこの2年で覚えた。今年からは毎週1、2回、ラジオ番組に出演して番組のつくりかたも学んでいる。
午前中にアヨデレさんを訪ねると、たいてい、ダミロラは彫刻にニスを塗るのを手伝っている。
「お父さんのお手伝い、好きと?」
「はい、もちろん」
すごくクールに、すこしてれくさそうに、口角をゆるやかに上げ、答える。
工房の前には、アヨデレさんを乗せて走りつづける1983年製のスズキのバイク。溢れんばかりの木くずを散らばせながら、父親は黙ったまま、ただもくもくと彫る。ニス塗りを終えるとすぐ、身だしなみをととのえ、自分の仕事場へ出かける息子。その横顔、手先の起用さは、父親にそっくりだ。
(毎週土曜日更新)