祈り、とどろく
2010年8月14日
大声をあげ、こぶしを振りあげて、全身をふるわせながら、祈り、歌い、踊るみんな。わたしはただぼう然とする。熱い。天井につるされた扇風機は、その羽根が見えるほどにゆっくりとしかまわらない。60人の汗がまじった熱気と鳴り響く祈りで空気は重く、気が遠のいていきそう。息苦しい。立ちっぱなしで足がむくみ、薄くて硬いプラスチックの椅子に腰をおろす。痛い。日曜礼拝がはじまって、すでに5時間半が経っていた。
幼稚園・小学校のお御堂には、しみひとつないじゅうたんが敷かれ、わたしたちは上履きを脱いでそこへ入った。クッションがはめこまれた木製のりっぱな椅子に腰かけ、説教するシスターの背後でかがやくステンドグラスを、ぽかんと眺めていた。中学・高校時代は、ミサがあるたびに、その静かで厳かな1時間半ほどを、いねむりして過ごした。日本のカトリックの学校に通ったわたしにとって、教会とは静寂な空間だった。
「そんなに叫ばなくたって、神さまには十分聞こえとうって」
そう言うのは簡単だけど、こんなに真剣に、わたしは祈れるだろうか。とどろく祈りがとどくことを信じてやまないみんなのなかで、ひとり、心がひるんだ。
(毎週土曜日更新)