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ココ

2010年9月11日

地面いっぱいにココを広げる労働者。2010年8月4日 イフェ、イロデ地区のココ集荷場にて

「個々」ではなく、「此処」と発音してみてもらえるだろうか。
そう、それが「ココ」のイントネーション。チョコレートの原料であるカカオのことを、「ココ」とナイジェリアの人たちは呼ぶ。輸入食品店にでも行かない限りチョコレートの姿を見ることはないけれど、ナイジェリアのココの輸出量は、世界でも五本の指に入る。

「ココでナイジェリアが生きてた時代はよかった。石油はこの国をだめにした」
そう嘆く、自国の産油利益でうるおうことのない多くの人たち。

オイルブームは1970年代にやってきた。以来すっかり産油に依存するようになったナイジェリアでは農業が衰退し、一部の人間による利益の占有と弱者からの搾取が著しいものとなった。ココの生産・輸出はつづいているが、農民たちの貧しい暮らしに変わりはない。

チョコレートと漬物を混ぜたような、甘酸っぱいにおいを想像してみてもらえるだろうか。道端のコンクリートの上、照りつける太陽の真下で、ココは乾かされていく。そして今日もどこかの大陸や島々で、みんながチョコレート菓子をほおばっている。

Photo
地面いっぱいにココを広げる労働者。ココの木から収穫された実のなかの種(カカオ豆)を発酵させ、天日で乾燥させている。その後、80キログラムずつ麻袋につめて、海外へと出荷する。種のなかにつまっている粉を原料に、チョコレート菓子は製造される。
2010年8月4日 イフェ、イロデ地区のココ集荷場にて

(毎週土曜日更新)