アーティストたちよ
2010年9月18日
降りやまない雨のなか、ナイジェリアから帰国した。残暑の厳しい日本にいて、9jaの朝の肌寒さを思い出せない日もあった。目が覚めてあの肌の感覚をとりもどす今日日、ひとりのアーティストが来日した。
アフリカのアーティストとして、日本の博物館で初めての大規模な個展が開かれるエル・アナツイは、ガーナ出身だがナイジェリアに在住して35年になる。使い古しの、つまり人の手が触れた金属を使って制作される彼の彫刻は、そこへ吸いこまれるような圧倒的迫力と、包みこんでくれる布のようなやわらかさを帯びている。
夕立がやんで茜雲が浮かぶと、エル・アナツイは9日間過ごした日本をあとにした。彼が向かったナイジェリアでは、ほかの国々と同じように、今日も、想像しては創造して暮らしている人びとがいる。著名な彼や彼女も、名もなき翁や若者も。なぜ彼らは創りつづけるのだろうか――そう思いをめぐらせているうちにあたりは暗くなって、今、南の空にぼんやりと、半月がかがやいている。
(毎週土曜日更新)