オリジネーター
2010年10月16日
「アーティストってのは、なんでも自分で創りだす。なんでもできるんだ」
自分自身を信じている。だからそう自分に名づけた、「オリジネーター(創造する人)」と。
「アーティストとしてやっていくことが大変だって? そんなことちっともないね」
わたしの口ぐせ、「なかなか大変そうですよね、このお仕事……」をはらいのけた、「オリジネーター」。
内職を持つアーティストたちをさして彼は言う。
「あんなのアーティストじゃないね」
看板、バナー広告、チラシ、ステッカー、名刺など、仕事のほとんどは依頼を受けて制作するもの。彼はそのかたわらで、布を染めたり、絵を描いたり、地元の中学・高校生向けに美術の教本を書いたりしている。国内外の美術展に出展したことはないけれど、イフェの街でアーティスト「オリジネーター」を知らないものはいない。
トウモロコシ市場を臨むアトリエには、コンクリートに開けられた正方形の穴がひとつ。ガラスも網戸もないその窓には、「オリジネーター」が染めた絞り布のカーテン。差しこむ光は雨季の大きな雲に時おりさえぎられながらも、彼の手元を明るくしている。
(毎週土曜日更新)