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8年間の監獄生活

2011年2月26日

2011年2月18日 ロンドン、サウス・トッテナムのティティの部屋にて

ロンドンには、数えきれないほどのナイジェリア人が暮らしている。イギリスの旧植民地であったナイジェリアは、いまでも旧宗主国イギリスと切っても切り離せない関係をもつ。通りでわたしを追い越す急ぎ足の男性たち、地下鉄のベンチに腰掛けて携帯電話で話す清掃員の男性……たった5日間のロンドン滞在で、何度も耳にしたナイジェリアの言葉。

ティティはイギリスに住んで8年になる。この異国の街でたったひとりの肉親である長女のイフェユンワはもうすぐ3歳に。来月イフェユンワの弟が生まれれば、肉親はふたりに。子どもたちのしあわせと自分のキャリアをつむこと、いまはそれだけをかんがえて生きている。経済的困難や法律上の問題などから、いつナイジェリアへ帰ることができるのかわからない。

「イギリス人からの差別はもちろん、ここに住むナイジェリア人もひどい。ナイジェリアの心を忘れて、ロンドンで生き抜くために悪魔になってく。信頼できる人なんてこの国に誰ひとりいない。ここはもう監獄よ」

それでも神を信じているから怖くない、あきらめない。神は解けない問題をわたしたちに与えはしない――それはまだ幼かったころ、故郷の母親が熱心に教えてくれたことだった。

Photo
姉のトインからの手紙を読むティティと、その横でテレビを観ているイフェユンワ。トインは2009年12月にこの手紙を書き、家族の誰よりもはやくロンドンへ行くことのできるわたしに託した。
2011年2月18日 ロンドン、サウス・トッテナムのティティの部屋にて

(毎週土曜日更新)