Thank God for Journey Mercy
2011年7月23日
「忘れ物はない?」
出発の朝、空港へ向かうまえに、母親のようにまじめな顔をしてシェグンが言った。
「ないない。もういいけん早く行こうよ」
外は大雨による洪水。わたしは焦っていた。
「…………」
コンクリートの部屋の扉に手をあてて、目をつぶったまま彼は祈っている。
30時間後、自宅に着いてすぐ彼に電話した。
「日本に無事に着いたの? ああ、神さまありがとう」
電話の向こうのシェグンの声は、雨音でとぎれとぎれに聞こえる。
「ぼくたち? あれから車はシートまで浸水して、4時間かけてやっと帰ったんだ。神さまの力でね」
畳の部屋にいるわたしは、神を信じて生きる友人を感じながら、ここにたどり着いたことを神に感謝した。
(毎週土曜日更新)