あおぞらエンターテイメント
2011年11月19日
雨期もたけなわ、ヨルバの地ではエグングンと呼ばれる祖先崇拝の祭がおこなわれる。キリスト教とイスラム教が主流となったこの国では、土着信仰である祖先崇拝はわずかな信者たちによってひっそりとしかおこなわれなくなった。それでも祭囃子と熱気に誘われれば「信仰」はにのつぎ。映画館や水族館、サッカー場もテーマパークもないこの地で年に1度の「あおぞらエンターテイメント」は、人びとを集わせ、魅了する。
頭から足の裏まで布で厚く覆われているエグングンの踊り手は駆けまわるように舞う。なんじゅうにも重ねられた古い布ははためいて何度もめくれるのに、内側の正体は見えない。目も鼻も口もない踊り手の脳天には動物の角や骨をあしらった不気味な木製の仮面。男たちはそのまわりで木の枝をふりまわし、鞭打ちあい、はやしたてる。踊り手は観衆の群れをめがけて走りだす。男たちも追って走る。逃げだす観衆たちは声をあげ砂埃を立てて散っては、また群れる。集まった老若男女はもう、数えきれない。
(毎週土曜日更新)