I miss you
2011年11月26日
「I miss you――会いたいわ」
電話の向こう、大陸を越えた外国にいる夫にそう言っていたママ・ブリジッタ。話のほとんどはエヴェ語(ガーナ南西部を中心に話されている言語)でわからなかったけれど、この英語はいつも下宿の居間から、庭から、ベランダから聞こえてきていた。
2010年、欧州から一時帰国した夫と5年ぶりの再会を果たしたママ・ブリジッタ。その1年後、母国ガーナで仕事の決まった夫のもとへと引っ越して行った。彼女にとって、11年ぶりの帰郷だった。
かつて夫が仕事をしていたイフェに娘とふたりで残っていたママ・ブリジッタと、同じ下宿で19か月過ごした。掃除や水汲み、料理や看病、雨漏り対策や巨大ネズミの退治、愚痴や悩みの言いあい、なんでも一緒にやってきたひとつ屋根の下。異国の地での不自由と孤独を気に病まず、女ひとりしっかりとやっていく彼女の姿を見ることは、「9ja暮らしのレッスン」でもあった。学んだ秘訣は、しっかり食べることと、たくさん笑うこと。
ともに暮らしたあたりまえの日々はときの向こうに過ぎ去り、かけがえのない思い出となった。つぎに下宿へ行ってももう会えないけれど、最愛の人と一緒に暮らせるようになった彼女に今度はわたしが言う。
「I miss you――会いたいよ」
(毎週土曜日更新)