時代が変わっても
2011年12月3日
かつてこの土地では、ヨルバの神々をあがめる信仰のために盛んに木が彫られていた。儀礼のための道具や太鼓、神像や祠の柱にも、人物や動物の具象的な像をあしらった装飾がほどこされていた。19世紀にイスラム教とキリスト教が布教するまえのことだ。
木彫の需要は20世紀半ばにはどんどん減っていった。しかし躍動感とユーモアあふれるヨルバの木彫は国内外の一部の人びとを魅了しつづけ、わずかとなったつくり手たちは彫ることをやめなかった。なかでも1940年代からカトリック教会の装飾として依頼を受けるようになったことは、主題こそそれまでとはちがうが、同じ木をつかって、同じスタイルで彫るという意味で、ヨルバの伝統を継続させるきっかけとなった。けれども、木彫づくりは以前のように盛んにはならない。
それでもいま、毎日彫りつづける人たちがいる。
「彫ることは体の一部みたいなもんだから」
「祖父の教えをただ受け継ぎたくて」
――そう静かに口にする彼らのそばで、時代が変わっても変わらないなにかを、見つけたい。
(毎週土曜日更新)