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Dear Steve,

2011年10月8日

2011年10月5日、Appleのスティーブ・ジョブス氏(享年56歳)がこの世を去りました。追悼文を記します。

Steve Jobs

Apple and me

ぼくがAppleの製品を初めて手にしたのは大学生のとき。研究室の先輩が15インチのPowerBookを格好よく使いこなすのを見て、憧れていた頃でした。研究資材として一台のラップトップを購入していただけることになり、迷わずPowerBookをお願いしました。

初めて手にしたAppleの製品で、一番衝撃的だったことは、説明書がついていない(正確には数ページの営業資料のみ)ということでした。

そのときに、恐る恐る押したパワーボタンが、ぼくの人生を変えるきっかけになるとは、まったく想像もしていませんでした。

説明書は「ついていない」のではなく、「不要」だと気づくまでにはたったの数分も要しませんでした。

ぼくが手にしたのは、一台のApple製品ではなくて、開くのが楽しみなパーソナルコンピューティング環境、ウィルス駆除の不要な世界、デザインの重要性への理解、大量生産の製品開発においてクリエーターの思いや製品への愛着がここまでユーザに伝わることができるという驚き……などなど数えきれません。

その日以降、ラップトップを開くのがたのしくなったのはいうまでもなく、テクノロジーとデザインの両立の重要性への理解は、サイバースペースとリアルワールドの“変換”や“インターフェース”を司るデータベースという研究領域にぼくを導いてくれました。

気がつくと、コンピュータサイエンスの分野で博士号を取得するまでに至ったのは、Appleとの出会いがあったからだといっても過言ではありません。

Thank you Steve. I am proud of you.

Steve、ありがとう。ぼくの人生を大きく導いてくれた最も大事な人のひとりは、あなたです。

あなたと同じ起業家という道を歩きはじめたのも、あなたに導かれていたのではないかとさえ思います。

あなたに直接会ったことはないけれど、ぼくの半生は、あたなが人生と情熱を注いできたAppleの製品といつもそばにありました。

おそらく、ぼくだけではなく、ほかの多くの人も、同じような経験をし、それぞれの物語があるのではないかと思います。

世界を変えたのみならず、ぼくひとりの人生も大きく導いてくれました。ひとりの人を幸せにすることほど難しいことはありません。それに人生をかけて実現してくれたあなたに感謝します。

あなたと同時代に生きられたことを誇りに思います。

安らかに眠ってください。心からお悔やみ申し上げます。

2011年10月8日

高橋雄介

Hello from San Francisco!