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ソーシャルメディアを使ったリクルーティング(中編)

2010年9月21日

今回は「ソーシャルな働き方」についてのメリット、デメリットを考えてみたいと思います。

メリット

前回、ソーシャルメディアを用いたリクルーティング活動について紹介し、採用や売りこみについて無限の可能性があることを紹介しました。では、この新しいメディアを使用する際に、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?

ソーシャルメディアを使ったリクルーティングは、効率がよく、低コストで、気軽であり、収集、表現できる情報量も多く、非常に魅力的です。たとえば、ある会社のTwitterアカウントをFollowしている人たちはその会社に興味のある人たち(Followers)であるということができるので、Twitter上で求人情報を掲載すればこの人たちに対して確実に直接告知することができます。ここでは、広告費が不要で、費用は対応するコミュニケーション担当者の人件費程度です。求職者とは時間帯や地域の制約なしに気軽に1対1のコミュニケーションができます。求職者のTwitter上でのソーシャルストリームを時間をかけて閲覧し、分析することで求職者についてさまざまな情報を得ることができます。一方で、求職者からすると気軽に社内の担当者や社長ともコンタクトをとることができ、実際に会社に入る前にも、オープンにコミュニケーションすることができるというメリットがあります。

図1. Facebookの広告機能が効果的に使用されている例。知り合いからのメールのようなさりげないコミュニケーションがなされている。

また、Facebook上に求人広告を掲出する場合は、ユーザが自ら登録しているプロフィールを細かく指定――たとえば、「日本の、東京の、渋谷区に在住の、20代〜30代の女性で、美容に興味がある人」のような絞りこみ――することで、厳密に何人のユーザにリーチできるのかをリアルタイムで把握した上で、広告の掲出を決めることができます。賢い使い方の例としては、これは求人情報ではありませんでしたが、慶應義塾の卒業生評議員選挙のリマインダーが広告として表示されており、(まさに顔見知りの)SFC三田会の方の顔が広告のなかに表示されていたため、忘れずに評議員選挙の投票用紙が送付されてきた封筒を開封することができました。Facebookの広告機能が効果的に使用されている例だと思います。

デメリット

しかし、メリットばかりなのでしょうか。Mashable.comの記事[1]の中でSharlyn Lauby氏はいくつかの気をつけるべき点を指摘しています。

ソーシャルメディア上で取得できる情報は非常に多岐に渡ります。たんに日常的なコミュニケーションや興味の履歴を閲覧できるというだけではなく、採用の障壁にもなり得るような情報も目に飛びこんでくる可能性があります。たとえば、その人の趣味や日常的な行動が社長や採用担当者の意向と合わないことがあります。しかし、それは仕事をする上では直接的には関係がないにも関わらず、採用に関する評価に心理的な影響を与えかねないのです。相手のプライベートまでも見えてしまうので、そのような情報を無視する覚悟がないと使いこなすのは難しくなります。

また、安易に飛びつくと、ソーシャルメディア上に掲載されている求職者に関する情報が大量にあるために、採用や評価において考慮すべき対象を複雑にしてしまいます。 求職者は、TwitterFacebook上のみならず、LinkedInSlideshareYouTubeDailybooth、さらに国内であればmixiGREEといった多様なソーシャルメディア上にアカウントを保有しており、ここに彼らの日常生活や仕事、興味から購買行動に至るまでの多様なログ(履歴)が掲載されています。これらをすべて閲覧して評価しようとすれば、必要以上に時間もかかります。

上記のような難しい前提を理解した上で、リクルーティングにソーシャルメディアを使用する必要があるのです。

(次回に続く)

参考文献

  1. [1] Mashable, “Should You Search Social Media Sites for Job Candidate Information?”.