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伊藤亜紗「信頼のナルホイヤ」―ぼけと利他 村瀨孝生と伊藤亜紗の往復書簡 第30回

2022年1月11日

「みんなのミシマガジン」連載『ぼけと利他 村瀨孝生と伊藤亜紗の往復書簡』の第30回として、伊藤亜紗さんからの手紙「信頼のナルホイヤ」が掲載されました。

『ぼけと利他』は、特別養護老人ホームの施設長をつとめるかたわら介護・ケアに関する著作も多数ある村瀨孝生さんと、身体に注目する美学者で介護・ケアについての発信もされている伊藤亜紗さんの間で交わされる、往復書簡形式のブログです。

伊藤さんは、介護・ケアを受ける方が、ケアをする方々へ、その体を「あげる」、信頼して渡すという感覚になってくるのではないかという、現場からの声を紹介しています。また、伊藤さんと角幡唯介さんの対談が元旦の朝日新聞に掲載されましたが、伊藤さんはそのときのエピソードを村瀨さんに語り、「狩りの本質は介護やケアに似ている」という角幡さんの発言や、グリーンランド・イヌイットの「ナルホイヤ」精神や「大地への信頼」と、介護され他者に共有される身体のありかた、そこに生じる共同性には通底するものがあるのではないかと語っています。

この書簡は『狩りの思考法』をお読みいただいた方が読むことで、とても味わい深くなります。私たちの日常にも、よく見てみると「狩り」の世界に近いところが見つかるかもしれない。イヌイットの狩猟的な世界観がすこし身近に感じられるようになるかもしれません。

この問いかけに、介護に深く携わる村瀨さんがどう応答されるのかも楽しみです。