極北彷徨② ベルーガが集う夏の日
2009年8月18日
2000~2006年までほぼ毎年、カナダ・ヌナブト準州を訪れていました。一番訪れたことがある季節が7~9月のこの季節、夏であります。夏といっても、気温は10度前後。暑い日といっても、15度ぐらい。9月にもなると、0度近くになり、雪が降ることもたびたびあります。
ハドソン湾に面したホエール・コーブ村。人口約300人のうち9割はイヌイットです。1日のほとんど太陽が隠れている冬から太陽が顔をだす夏の日。それを待っていたかのように、村の周辺にはベルーガ(シロイルカ)が集います。ベルーガ周遊を海に面した家の人が発見すると、村中の電話が鳴り響きます。また、無線機で発信。
「ベルーガがいた」
この知らせを受けた人たちは仕事そっちのけでボートをだします。ヤマハ製の船外機をつけたボートに所狭しと人が乗りこむ。発見の報をした人の無線を頼りに、ボートを走らす。ベルーガは岸辺を好んで泳ぎます。極北の透明な海に、白い体が優雅に動く。銃声が平坦な極北の大地に鳴り響きます。バランスが悪いボートの上で銃口を定めるのはけっして簡単なことではありません。何発かの銃声のあと、淡い赤色の波紋が水面に広がります。
ベルーガをボートにくくりつけ、近くの岸辺へ。刃渡り10センチメートルほどのナイフで解体。全長5~7メートルほどあり、脂肪部分が多いベルーガを解体するのは一苦労です。村の近くで獲れた場合は村人たちが自然と解体場所に集まってきます。そして、マクタックといわれる皮部分をおすそわけ。イヌイットはこのマクタックを好んで食します。マクタックは歯ごたえがありますが、非常に美味。
夏のおわりとともに、ベルーガは北上します。夏の到来とおわりを告げるベルーガ。イヌイットにとってベルーガは夏の風物詩なのかもしれません。一昔まえまではベルーガが訪れる時期をある程度予測できたようですが、最近では時期のズレが目立つようです。日本列島も今年は異変つづきでした。「気候変動のため」とは断定できませんが、動植物は人間よりも地球の異変を敏感に感じているのかもしれません。